えむ♪のゆきあたりばったり。

30代外資系OLです。4月からワーキングマザー(予定)

「あなたなんか早く辞めればいいのに」

 お世話になった会社でのネガティブなことを書くのは控えているのですが、”自分のことを嫌う人との付き合い方”というテーマで考える機会があったので、少しだけ。

 二度目の転職先は、ある外資系金融でした。外資でも特に金融は人間関係がきついという噂がありますが、天国も地獄も上司次第です。私の上司はたまに乙女すぎてめんどくさいところはあるものの、基本的にはいつも心優しい男性だったので、それなりのプレッシャーはありつつも、楽しい会社生活を送っていました。

 一方、私の斜向かいに座っていた女の子は、常に刺々しい女性上司の佐藤さん(仮名)に叱られてばかりでした。毎晩遅くまで残業もしていたようです。外資OLっぽいキリッとした態度の合間に、時折、とても疲れた表情が窺えました。
 彼女の、いつも綺麗にケアされていたネイルの根元が伸びっぱなしになってることに気づいたある日、彼女の手が小刻みに震えているのに気づきました。パニック障害になってしまっていたのです。

 ほどなくして、彼女の退職が決まりました。
 呑気な私は「後任は誰になるのかな。大変そうだなぁ。若い男子とかだったら、あのおばさまも優しくなるのかな」とぼんやりと思っていました。
 なかなか後任が決まらない中、上司と部長に呼び出されました。嫌な予感がしました。
「来月から、佐藤さんのところに行ってくれる?」
 申し訳なさそうな顔をしている二人。息を飲む私。いやだ、いやだけど、会社員としては断れない。
 飲んだ息を吐きながら、「はい、わかりました」と受け入れました。
 二人の表情が安堵に変わりました。
「大変だと思うけれどがんばって。えむさんならできるから」
 …大変だってわかってるのね…。私ならできるってどういう意味…?

 嫌でもなんでも業務命令。それに、どんなにきつい人だって人の子にはかわりないんだから、どこか愛せるところが見つかるはず。

 …と、気持ちを前向きに立て直した私の心を凍らせたのが、異動初日の佐藤さんとのミーティングでの最初のひとことでした。
「私、あなたなんか早く辞めればいいのにって思ってるの。だから、後任に欲しいって頼んだの」
 …え…?何その、わかりやすい悪役みたいな発言。辞めさせるために自分の部下にしたって何?
 内心の動揺を隠すようににっこりとして、「そうですか。でも、私のできる限りのことを頑張ります」と答えました。

 「私、このフォント嫌いなの!」と私の使うArialにケチをつけても、派遣で来ているアシスタントの使うComic Sansはスルー。
 エクセルで作成したレポートに罫線を入れたら、「なぜ罫線をいれたのか」について問い詰められる。
 そんな嫌がらせのような彼女の”指導”が日々、続きました。
 心が折れそうになるたびに、手帳の最初のページに書いた”平常心”という文字を思い出して穏やかな表情を取り戻していました。嫌がらせに対して、平常心を失ったり、くさったりしたら、その時点で自分の負けなんだと思っていました。

 ときに叫びだしそうになる気持ちを家飲みのワインでなだめすかしながら、佐藤さんが退職するまでの2年半を過ごしました。

 彼女がなぜあんなにもいつも意地悪だったのか、理由はわかりません。
 全然楽しくなかったし、よかったともまったく思っていません。佐藤さんが退職せず、私もずっと働き続けていたら、私もパニック障害になっていたかもしれません。
 でも、あれ以来、仕事で辛い状況になるたびに、なぜかあの理不尽に晒され続けたことを思い出します。そして、「大丈夫。乗り切れる」と自分を励ますような気持ちになるのです。

 

つける薬のない攻撃的な人もいるみたいです。

他人を攻撃せずにはいられない人 (PHP新書)

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